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24.天の川 [日月記録 ~これまでの話。]

「先生、なんか鳴ってるよ、彼氏?」
子供が冷やかすのを笑って誤魔化しながら、大急ぎでトイレに駆け込む。

「・・もしもし、サク?」
「ひなちゃん?」
緊張でうわずる私の声にかぶさるように、サクの、嬉々とした元気な声がすぐに返ってきた。
家族が大騒ぎするほど大胆な行動を起こしたとは思えないほど、
のんびり明るい声のトーンに、私はがくんと拍子抜けした。
毎度のことだが、サクの神経はまったくわからない。というより神経なんて無いのかもしれない。

言葉を選ぶまもなく、トイレの入り口から、子供の声が聞こえる。
「先生、サクってだあれ?ねえ、誰としゃべってるのぉ~?」
・・おお、とにかく今は、あれこれ話してる余裕はない。
「サク、今、どこにいるの?私、今から塾を出るから、電車でそこに向かうよ。」
「・・んーと、今ね、○○駅のローソンの駐車場にいるよ。」
のほほんとしたサクの答えに、私は一瞬、耳を疑った。
「・・・○○駅のローソン?」
私は、信じられずにひつこいほど何度も聞き返した。

なぜなら、そこは、職場のすぐ真後ろだったからだ。

「・・・サク、それ、こっから見える場所だよ。
私、すぐそばにいるよ。なんでわかったんだろう?私、教えてないよね。
・・まあいいや、とにかくすぐ行くから、待ってて。」
私も、いいかげんこの不可解な展開に慣れていた。
今更理由を聞くのもバカバカしいようにさえ思えた。サクはとにかく普通の人間じゃない。
シックスセンスとかいう超感覚と、第三の眼で生きてる人なのだろう。
「わかった。待ってるよ。」
もちろん、何の動揺も見せず、当然のように意気揚々と答えるサク。
ああ、私、いよいよ異次元へ連れて行かれるかもしれないわ・・・ふとそんな懸念が胸に広がる。
「私がここへ来なかったら、怪しい人物に拉致されたと思ってね・・」
・・近くの大学生スタッフに思わずつぶやいたこの冗談が、やがて現実になるとは、
このときの私は知らない。

「センセ、誰~?誰なの?サクって!」
大げさに冷やかし携帯を見ようとする生徒を宥めながら、大急ぎでタイムカードを切り、
小走りでローソンへ向かった。

すぐそばなのに、一歩一歩がなんて長いんだろう。

初めて会うサク。お互い、特徴も何も知らないけれど、サクがいうように運命の相手ならば
きっと会った瞬間、私のうちに何かが起こる。

怖いようで、楽しみなようで、
出会ってはいけない人のようで、出会うべき人であるようで。

とうとう、このときが来てしまった。

魂と魂で結ばれたという、約束の相手の姿を見る瞬間。
夢か、幻か。嘘か、真実か。
そんなことは今の私には、わからない。

とにかく行けばすべてわかる。

そんな気がした。



・・サクはそのとき、すでに知っていたのだろうか。

彼の待つ場所の横手には、
ちょうど川が流れていたことを。


そして
その川の名を、「天の川」ということを。

七夕伝説ゆかりの場所ー、
そこで、私とサクは初めての出逢いの瞬間を迎えた。


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