So-net無料ブログ作成

28.つながる想いと約束と。 [日月記録 ~これまでの話。]

1501451576_f37945d5cd.jpg

はかない幻なら、いらない。
真実だけを掴みたい、
そう思って、生きてきた。

けれど、ひとつの出逢いが私を変えた。

一瞬が永遠に変わる空間。

車内いっぱいに流れるその歌声を浴びながら、私は思った。

これが、ひとときの夢でも構わない。
たとえ幻なら、もう覚めなくてもいい。

私ごと、消えてしまったって構わない。 と。




「不思議だよな・・」
「不思議だよね・・」
やがて曲が終わり、それぞれの金縛りを解くように、ため息と共に、互いに呟いた。

私は焦点の定まらぬまま、窓越しの空を眺めながら、言葉を重ねる。

「そうだ。
サク、私ね、なんでかわからないんだけど、
よく仕事の帰り道、夜空見ながら思ってたことがあるんだ。
それがね、月に向かって沸いて出る言葉が、自分でも変なのよ・・。
『いつか、還ります。迎えに来てください。』って、言ってるんだよ。おかしいよね。
どうしてそんな風に思うのかわからないけど、そう呟きながら泣いてたことがある。
そんな姿を見てたわけじゃないのに、お母さんにも言われたことがあったな。
あんたがいつか、どっかに行ってしまう気がするって。
どうしてそんなこと、思ったんだろうね。」

笑いながら、涙が流れていた。

「サクと出会うまで、私、誰かと心から愛し合ったことってなかった。
 他の誰かと、同じくらいの想いでお互いに通じ合ったこと、なかった。
友達も、恋愛も、男性も、女性も、そう。
だから、この世にそんな関係なんて、ないのかもしれないって思い始めてた。

私にとって恋愛はね、憧れでしかなかった。
心底好きになれない男の人と付き合ったりできるほど、器用でもなかったし、
むしろ、ひとりでいる方が好きだった
だから、きっと生涯結婚もせずに、神とか見えないものとか、探しながら
一人で生きていくんだと思ってた。

・・・だってね、
今までいつも、人をとっても好きになった途端、想いを告げる間もなく別れが来るの。
まるで、作為的にしかけられてた出逢いだったみたいに、さよならが、来るの。
友達もそう、仲間もそう。
それが、私の宿命なのかなって思ってた。
だから、悲しむのが分かっているなら、もう誰かを特別に好きになるのをやめようって。
そう言い聞かせた。
大好きなのは、家族だけでいいって。なによりも誰よりも、家族が好きだった。
それだけで、いいやって、諦めてた。
そしたら、サクが来たんだよ。姿かたちもなく、言葉だけで。

・・・初めて会ったはずなのに、サクは私のそれまでを、全部知ってるみたいだったね。
私のこと、何も話していないのに、この歌詞の『風の人』だといった。
歌を聴いて、あんなに涙が流れたことなかったよ。」

サングラス越しのサクの穏やかな瞳は、時折潤んでるように見えた。
そして、低い声をさらに低くして言った。

「わかるよ。全部。
ひなちゃんのことなら、初めから訊かなくても何でもわかってた。
ひなが喜ぶこと、考えてること、悩んでること、全部、わかってた。
言ったろ? 
オレは、ひなの神様だよって。」

それは、疑う余地もないほど自然で、確信に満ちた言葉だった。

「オレ、相当大嘘つきだけど、
ひなには、嘘、ついたことない。」


何もかも投げ出してここまで来た彼に、
一体何を疑えるだろう。

彼の心は、一体どこまで透明なのかー、

その頃の私は、ただ驚くこと、泣くことでしか感動を示せなかった。







共通テーマ:blog

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。