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ふたりのヒトトナリ。 ブログトップ
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純水 [ふたりのヒトトナリ。]

「高度に精製された水はね、ヒトの体には合わないんだよね。
純粋すぎて、飲めないんだ。」

そう云った彼こそ、
この世を流れる純水だった


心が無色透明に近づくとき、
ヒトは
世の生き辛さに喘ぐものだろう

無欲では生きてはいけない
せめて生きようとする欲がなければ


彼が生きることを選んだ理由は
その娘を守るためだった


繊細すぎる感覚は
かえって自分を破壊する鋭敏な諸刃のようで

穏やかに生きたいと願う彼女のために
彼は
「純水」を「金」に換え
そうして「鈍」さを選択した


命在ることは濁り在ることだった

今をまともに生きることは
濁り在る自分を知ることだった

社会を生きるとは
飲みやすい水になることだった

そして

社会の体内を流れながら
社会の何かを流していこう

社会の何かを流していこう

それが
今を生きる唯一の道
その水が選んだ自らの役割

イキザマ。 [ふたりのヒトトナリ。]

昔から
助手席に座って
窓から外を眺めるのが大好きだった私


流れる風景を観ながら
他愛もなく あれこれと
ささやかなことに想いを巡らせる時間

誰にも覗かれることなく
少女の頃からそっと
心の内に秘めてきた
様々な想い

誰に話しても
おかしな娘だと笑われるばかりで
そのうち
言葉にするのも諦めてきた

今 あなたが横に居るから
ひとつ ひとつが
言葉になる


あなたが呟く

「俺たち、
なんで生きてるんだろうね」

私は待ってたように口を開く

「今、ちょうど思ったの。

きっとね、
人が生きてる理由って
あの世で神様にプレゼントするための
とびきりの笑い話をこさえるためなんじゃないかな。

死んだ後、
自分のイキザマをどれほど面白く楽しく
神様の前で伝えられるのか。

そこで順番に話を待ってる神様をね、
どのくらい満足させられるのか。

過去の辛いことも苦しいことも
最後の最後には誰しも笑い話になっちゃうでしょう?
呆れるほど馬鹿な話ほど、
たくさんの人が楽しめるでしょう?

私たちは今、
あまりにも酷すぎて、
本当にメチャクチャ。
長編小説にも出来ないくらい支離滅裂で
そりゃどうしようもないけど…。

きっと、死んだらあの世で
最高に面白い話になる自信、あるよ。

喜怒哀楽は、笑いに変換できる。
でも逆はできない。
笑いって、様々な感情を超越しちゃう、
オールマイティなカードだと思うんだ。

…あなたが今まで一度も敵を作らなかった理由、
私、何だかわかるよ。
人を笑わせてばかりで憎まれる理由がないもん。」




「…そ?
俺、馬鹿だから。
人と真面目な話なんかしたことないからね。」

…彼は、自分のことをいつも
「人間のクズ」と呼んでいた。
今までの人生そのものが
ジョークだったとも。

でも私は知っている。
自分のことを誰よりも馬鹿だと云える、
そしてそう振る舞える強さと利口さを。

だからこそ、
彼は、皆に愛され友に囲まれて生きてきたことを。

「どんな悲劇も小難しい理屈も
善悪も敵も味方も
お腹を抱えるくらいのあなたのジョークには
どうしたって太刀打ち出来ない。




あなたを見ると、
人は勝ち負けなんかどうでもよくなるんだよ。

プライドを持ってることのほうが
馬鹿らしく思えてしまうんだよ。

そして結局、周りが平和な気持ちになるんだよ。

だからね、
笑いの意識はすごく高いと思うんだ。

感動という意識すら、
何かへ向けられた個人の感情である以上、
敵を作ることもある…。

笑いは、すべてを吸収しちゃうチカラがあるのかもしれないね。




…そういえば、
ドラマ観てもいつも笑ってるよね。
感傷的になったりしないの?」

そのとき、
即座に返ってきた彼のひとことに
私はまた、
言葉を失う。

「うん。
でも、本当はね
気持ちは全部わかるんだよ。」


社会の目のなかで
いくら愚者だと云われてこようと
彼の意識は決して愚かではない。

感情を理解していなければ、
乗り越えていなければ
ある現実を、困難を
心から笑いに変えることなどできないからだ。


愚かな役を引き受けるために生まれてきた彼の魂は
人間のあらゆる感情を理解していた。

そうして
私は 今日も

彼から学ぶ


見上げれば、花びら。 [ふたりのヒトトナリ。]

彼はとても不思議なひとだ
出逢ったときから今もずっと

「ひなが欲しいもの
何でも望むまま手に入れてやるよ」

そう言って私の手を引いた
廃車寸前のクルマと
僅かな小銭だけ持って

「行きたい場所
何処でも行くよ」
と笑ってた

やがて
ガソリンは尽き
ふたりの財布の中の
ささやかな全財産も
簡単に底を尽いた

彼はそれでも笑って言った
「ひなの望むまま何でも出来るよ
何もかもうまく行く」

やがて
彼は大切にしていた服を売った
靴を売った
それまで一番大切な宝物たちも
惜しまず手離した

私の喉を潤すために
不安を癒すために
体を真っ直ぐにして眠れる場所を得るために

何かを手に入れるどころか
毎日持ち物の何かを失っていた

寒くて丸くなって
夜を越したこともあったけれど
彼はいつも笑っていた

ウソツキ
アナタガワカラナイ

そう言って泣いた私にあなたは平然と返した

「はじめから
すべてわかりあえる関係がほしい?
そんなのは俺に云わせりゃ、
何の進歩もない、つまらないよ

今はわからなくても
いつかわかるよ
全部意味があることが。」

そして
最後には
私の心に落とされた影たちはいつも
彼の明るさに照らされた

そう彼は
今まで一度も嘘は言っていない
今の私にはわかる
私の本当に望むものを
彼の魂は何より知っていた

それは
全部失わなければ
気付けないものだった

変わりゆく時間の中でも
変わらずにむしろ育ちゆくもの
溢れ続けて なお止まぬもの

お腹を満たすことよりも
けして朽ちない食べ物を

凍えた体を温める前に
惜しまず注がれる
まことの心の温かさを
私はずっと探していたのに

すべて失って
初めてふたりの間にある
豊かさを知った

彼の愛を
疑ったことは一度もない

弱い私が
あまりに不安になったとき
思わず訊いたことがある

「私がこんなに泣いているのに
あなたはそれでもいつも笑うんだね。

私が欲しいもの何でもくれるって、
いつか、言ったよね。
今、何をくれるっていうの?」

彼はそのとき
急に真顔になってひとことだけ言った

「 あげてるよ。ひなが一番欲しいもの。
 
  ものの考えかた。」

私はそのとき
何も言えなかった

私は確かに望んでいた
すべてを笑い飛ばせるほどの強さを
善も悪も
良きも悪しきも
深い闇すら
愛せるほど
大きな心の認識を




彼は悲しみに同調しない
そこから私の精神が得るものがないことを
本当はよく知っているから

そういえば
私は彼の怒りを見たことがない
彼が
彼自身のことで悲しんでいる姿も

いつも
茶化してばかりのあなただけど
ことのすべてを
明るい光に変えてしまう強い人

忘れているかもしれないけど
あなたはいつか呟いた

「死ぬときにね
どんな意識で居るのか
今はその準備期間だよ」

私はこの言葉が好きだ

あいかわらず
泣いたり喜んだり
忙しい私だけど




いつかあなたのように
大きい心でその時を迎えたい

だから一緒に
正反対のふたりを繋いだ
この曲を聴くんだ

   「 今生の風に
   吹かれて 吹かれて はるか

     楽しいことや
      悲しみも
   見上げれば、花びら  」


のぞみ。 [ふたりのヒトトナリ。]

あなたの答えは
いつも知ってる

それでも私はやっぱり訊くんだ

「何がしたい?」
「何が食べたい?」
「何がほしい?」

あなたはいつも
少し間を置いて一言応える
「なにも。」と

私はちょっと困って
「つまんない。」
と笑う

好みも趣味も
まるで交わらぬ過程を生きてきた
私とあなた

だけど 今
共に並んで訊ねる
この質問の答えは ふたり同じ
「なにも。」


お互いに
一度 目に見える何もかも 失った
だからなのか どうしてなのか
欲しいものが 何もない

もしも
今を生きるために
意味を必要とするならば

隣にいる
あなたを
せめて せめて
喜ばせることだと

だからこそ
答えをわかっていながら
質問を繰り返す

それが 今の私の精一杯

私はあなたのために
好きじゃなかった趣味を愛し

避けてた知らない世界を受け入れる

あなたは私のために
忌み嫌っていた仕事を休まず

避けてた知らない世界を受け入れる

ありのままの お互いの世界
それが魂への
最高のギフトなのかもしれない 

だから ね
どんなプレゼントもかすんでしまうほど
この瞬間
有り余るほどに 与えられているものがある

無鉄砲な出逢う前の二人
それは今も同じこと
違うのは

私があなたの心配をする
あなたが私の心配をする

台風だと思っていたあなたとの時間は
そうして
いつのまにか
穏やかな風へと変わっていた



人々が 争いを無くすのは
きっと
むずかしいことじゃない

与えるほどに豊かになる法則が
そこには確かに見える

私が嬉しいことは
あなたが嬉しいこと
あなたのために生きることが
私のために生きること

そんなふうに想い合える関係が
この世界に
増えたなら

もっと多く人たちが
性質の違いを
抱き合えるだろうに
互いを比較することの無意味さに囚われず
己を偽らず
自分らしく 生きられるだろうに

ベクトルの方向は違えど
私たちは
同じ平面
同じ空間

幾億の路がありて然り

それぞれの基準に留まらず
自由に遊べたら
自由に楽しめたなら

ああ

いいのになあ


そして 今日も
あなたと私 

なんの変哲もない日常を
冒険しながら

ともに美味しいと感じる
人生の味を 探そう


逆光。 [ふたりのヒトトナリ。]

彼は
学校の授業からは何も学ばなかった

悪戯と遊び
仲間たちと笑い

型破りのスリルに
心も体も弾けた高校時代

そして
バイクと音楽の
胸を焦がすような爆音たちと
心を貫くアートに

気の向くまま浸り
気の向くまま時間を費やした

笑いと興奮の毎日の中で
仲間達を得
友を慕い
彼は自分の真実を掴んでいた


その頃の私は
学ぶべきものは
学校と塾にあると信じていた

参考書を頼り
先生を信じ

本を読み
知識を増やそうともがいた高校時代

何かを見つけたい一心だった

時間を惜しんで
鉛筆を握りしめ
ページを捲った

微分積分ベクトル
化学式古典文法英単語

ひたすら頭に詰め込む作業に
気を煽られるまま浸り
気を煽られるまま時間を費やした

抑制を自信に替えて
努力を希望へと仕立て

忍耐と自制の中で
難問をいくら解こうと
理解出来ぬのは人の心
自分の心

私は自分の空虚さを
そこで漠然と見ていた


私もまた
一番知りたいことを
学校からは学ばなかった

しかしながら

遠回りだとしても

その空虚さを知ることが出来たことは
最高の幸運だった

知識と理論を追い求めたこと
それが
知識や理論を手放す準備となった

求め続けたこと
それは
求める必要がないことに気付く
最高の準備だった


二つの生き方は
何も間違いはなかった

扉は違えど
出逢う部屋は同じだった


必要な鍵だけを
初めから握っていた者
そして
多くの鍵を試しては手放し
最後に残った鍵で開いた者


別々の扉は
初めから
同じ部屋の鍵で開くように出来ていた


人が
幾度も生を繰り返し
最後に握る鍵とは
同じものなのかも知れぬ


不思議なことだが
子供も大人もお年寄りも
彼に出逢う人は
みな
なぜか彼を好きになる

それは
彼が人間を愛してきたからだろう

何の理由もなく
彼は注ぐのだ

誰であれ目の前の人間に
先も後もない
100%の自分を

魂を積み重なる「今」に託すのみ


それほどに彼が
人の心を何より重んじてきた理由は
教えられたからではなかった

何の理屈も教養もなかった

彼はただ楽しいこと
カッコいいことが好きだっただけ

並外れた生き方でも
自分を喜ばせる面白さを誰より探した

そしてただ
人を楽ませることが
自分をも楽しませる最高の方法だと
少年の頃から覚っていただけだった

彼の
友への愛は
雲ひとつない晴天のように
単純で無垢だ


「だっておもしれ―んだもん」

そう言って彼は
宝物すら相手に差し出す

人を笑わせるためなら
何の迷いもなく
自分の拘りを投げ捨てる

「楽しいなら、
何でもいいんだよね
だからクズになることを引き受けた」


理由も信条もないことが
全てを捨てられる程
人に優しくできる唯一の理由だった


人はなぜ
理由を探して
複雑に生きてしまうんだろう

理屈とルールにまみれて
形骸化した知識と
合理化された規則

明日への不安が
人の感受性を飲み込んでしまう

偽りを正当化しながら
これが私と飾り立てる

心は鈍くなり
硬くなり
呼吸すら出来ぬほど
しがらみに抑えられて


見せかけの体裁を
取り繕う醜さにも
気付くことが出来ぬままに?


「楽しいからだよ
面白いからだよ
だって俺、バカだもん」


彼が愛されてきたのは
立派な肩書きの人間だからじゃない


彼がこの世界を
人を今を
心から楽しんでいるからだった

共に居たい
そう人が思うのは
多くの素晴らしい論理や
知識を持った者じゃない

尤もな批評や
たいそうな正義でもない

彼と出逢った魂は
否応もなく気付くのだ

ただ
生を楽しみ
そして
愛してくれる者だと

自分が愛せなかった世界を
人を
そして自分たちを

愛してくれる魂なのだと


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